建物と人 : INTERVIEW-2016.4 「海洋船舶工学の九大建築」 中武先生

船舶海洋工学と九大箱崎キャンパス
九大箱崎キャンパスで船舶海洋工学の教壇にたたれた中武先生(九州大学名誉教授)に、
船舶海洋工学実験水槽と実験室にまつわる思い出話を伺うことができました。
実験水槽と実験室は何を見てきたのでしょうか?
実験水槽の思い出。
ー(実験水槽の写真を見ながら)これが実験水槽があるときの最後のところですね。
船が旋回するときのね、運動性能の水槽でした。
結構大きかったですもんね縦横25mありました。
ー天井のこれ、何かの実験をしてあったんですか?
船が回るときにどんな航跡をとるかね。
それを上から写真を撮るための櫓(やぐら)ですね
横からじゃ見えないから。
ーこの櫓自体はいつの時代からある櫓なんですか?
私が大学出たのは昭和38年、それから7,8年してから。
始めは櫓はなかったんですよ。
水槽だけで、その後で、45年くらい前にきれいになったんじゃないかな。
屋根のお金がなかったから。
ーこれは戦後の建物だったんですね。
もちろん。これは新しい。
ー櫓ができる前は水槽だけが戦前はあったんですか?
そうですね。私が大学院にいた頃まではプールだけ。
金魚を飼って泳いでたよね。
戦時中の九大。
ー戦前はどんな技術をこの実験水槽で研究されていたのですか? 実はあの軍艦のここは・・・とかいう話はあったりするんですか?
特に大学では軍艦の研究はやってないですね。やらないというのが原則なんですよ。
戦前はやってたかもしれないけど、そのへんのことは分かりません。
ー戦争中は九大は爆撃は一切受けてないんですか?
受けてない感じですね。米軍の方も避けてたんじゃないかな。
爆撃を受けたっていうのはほとんど聞いてない。
ー戦時中はどんな軍事技術が大学の中で研究されていたんですか? 九大の都市伝説で人間魚雷・回天のような特攻兵機の実験をしていたとウワサを聞きましたが本当ですか?
もっと基礎的なことをしてたんじゃないかな。
軍事関係のやつは聞いてないですね。
戦後になったら軍事研究はしないことになってますからね。
120mの実験室。
ー(推進性能実験室の写真を見ながら)この120mは何をするためのものなんですか?
船が水上を動くときは、プロペラで動くわけですよ。
そのときに、船をあるスピードで動かすにはどれだけ力がいるかっていうのを水槽でひっぱって調べてたんです。
普通は抵抗推進性能の水槽といってましたけどね。
今でも三菱の長崎とか日本の大きな造船所にはだいたい水槽があるんです。
幅はうちのは2.7mだったけど他のところは幅が10mとか、日本で大きいのは20mくらいあるかな。
長さは400m。そんなやつがあるんですよ。
そうなると模型の大きさだって7~8mくらいのが必要になります。
ー基本的には模型を使って抵抗を調べるための実験室だったんですか?
そうですね。
エンジンの代わりにモーターをつけてね、その推進器(プロペラ)を回してどれだけのスピードでちゃんと進めるかどうかね。
そういうのを確かめてました。
ー隣の赤煉瓦の船舶海洋工学実験室はどういう実験をされてたんですか?
そうですね。
模型船を作ってみたり、鉄製のいろんな器具をつけたり作ったりする、実験の準備室みたいな。
木製の模型船を作っている人がいたんです。だんだん人が少なくなってね。そういうことやる人いなくなっちゃって。
最後の頃は、模型を作る専門の会社に頼んでましたね。
実験の器具とか、駆動の仕方とか、台車をひっぱるのとかだんだん正確になっていくので、ずっとお金をかけてね。
水槽自体は何回かヒビがはいったりしたから、修理して使ってました。
大学の水槽で一番古かったですね。
その次に、東大で60mのものが今でもあるけど、使ってるかどうかはわからないですね。
ー東大のは60m、これは120m倍ですね。
日本の大学実験水槽で一番古くて、東大よりも長い。
船に導かれて。
ー先生はなんで造船の方に進まれたんですか。
いろいろあるんだけれども、私、生まれは宮崎の山の中でね、親父は海軍だったわけ。
結局、親父は佐世保の軍港で事故で亡くなったんです。
母に育てられ、姉と、ばあさんと、育ててくれたんですけど、船の話は母がよくしてましたからね。
船って、すごく立派だってね、軍艦だし。
それがやっぱりどっかにあったんでしょう。
まあ、運命かな。
しかし、やってきて良かったなと思ってます。
ー先生の想いそのものが詰まった場所だったんですね。
ありがとうございました。
インタビュー/九州大学名誉教授 中武一明先生
2016年4月19日
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