航空工学教室/解体終了
戦時中の記憶を刻む壁の跡
九州大学工学部の航空工学科は、東大に次ぎ我が国2番目に設置された、由緒ある学科です。卒業生には著名人に宇宙飛行士の若田光一氏もいます。
建物は極力無駄を省いたシンプルな造形として農学部6号館と共にインターナショナルスタイルが見事に表現されており、管制塔をイメージした高い塔と強調された水平な庇が印象に残ります。設計には、シェル構造研究の第一人者であり、構造デザイナーの坪井善勝が加わっています。後に坪井は、国立屋内総合競技場のシェル構造をはじめ、東京カテドラル聖マリア大聖堂、万博お祭り広場などの丹下健三作品の構造設計に係り、日本のモダニズム建築に貢献しています。
航空工学教室は、戦争末期の空襲避けに黒く塗られた迷彩のペンキ跡が色濃く遺り、戦争の記憶を現在に留め、平和を願う遺産としての価値も高く評価できます。
物件情報
構造規模 | RC造、階数6 |
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建築面積 | 658㎡ |
延べ面積 | 1,845㎡ |
竣工年 | 1939年 |
状態・コメント | 鉄筋コンクリート構造であるが、構造体が劣化しているため、詳細な調査が必要である。 |
今後の取り扱い | 評価B/比較的評価の高い建築物で、運営主体による費用対効果を考慮して取り扱いを検討する。 Bグループについては以下の取り扱いをする。 ①事業者が再活用を検討するための情報を公開する ②国・地方公共団体等に公用・公共用の施設として再活用の要望が行われた場合には、優先的に考える ③民間事業者が再活用を申し出た場合には、箱崎キャンパスの記憶を継承する象徴性と費用対効果を踏まえた実現性及び周辺環境との調和性を本委員会で検討し、土地処分を前提とした開発事業者募集前までに、大学において取り扱い方法を決定する ④再活用がなされない場合は、記録保存のプロセスを実施した上で、大学において取り扱い方法を決定する ※事業者が見つからない場合は、評価Cと同じプロセスになると考えられます。 |
参考文献:「平成24年度 九州大学箱崎キャンパスにおける近代建築物の調査」、「福岡の近代化遺産」
- 経済産業省による「近代化産業
遺産群 続33」に登録された建物 - 平成24年度九州大学箱崎キャンパスにおける
近代建築物の調査において評価をうけた建物 - 更地化されたエリアまたは
現在更地化が進んでいるエリア - 近代建築物の調査において
評価をうけたが解体された建物